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タッ タッ タッ タッ タッ タッ…… 夕食後の落ち着いた時間。私は食後のジョギングをしていた。 えっ? オリンピック? 東京だったら狙っちゃおうかなぁ。 タッ タッ タッ タッ タッ タッ…… 恋愛なんてよく分からないし興味もまだそんなにない。話を合わせるので実は限界。 ただピンクのフリフリドレスは羨ましく思った。 あの三人にその事を言ったらドン引きされたけどね。 タッ タッ タッ タッ タッ タッ…… 私はどうしたらいいんだろう。 って考えても仕方ないよね。私に考え事は似合わない。 「ありのままぶつかっていこう」 从*▽ゥ▽从<おままごと恋愛保全。とか言って。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ 「急いで病院へ向かって!!」 お嬢様のその言葉。 確かに急いで病院に行くべきだとは思う。 今はアドレナリンが出まくってるのか、まだほとんど痛みも感じていないけど。 神経が高ぶってるから妙にハイな気分にもなっている。 でも、これから患部が急激に腫れ上がってくるのは分かってるし、盛大な痛みも襲って来るだろうから。 だから、すぐに病院に行くべきというのは当然なんだけど、心残りがある。 それは、帰省してきている海夕音ちゃんに会えないということ。 そして、もうひとつ。 「プール! プールは!?」 「え? プール?」 「そうだよ熊井ちゃん。プールだよ!」 「なに言ってるの? それどころじゃないでしょ」 「プール!!」 彼女の言う通りだ。なにを言ってるんだろう。僕は・・・ 自分でもよく分からないけど、僕はいま変に興奮してしまっている。 だって、目の前まで迫っていたビッグイベントを目にすることが出来ないなんて・・・ これでお屋敷を後にしなければならないなんて、そんなのつらすぎるよ。 「まぁ、そんなにプールを楽しみにしていただいていたの?」 純粋なお嬢様が純粋な気持ちで僕の言葉を純粋に受け取ってくださった。 「はい(泣)」 「そうでしたか。でも、プールは今日だけでは無いですから、まだ機会もあるわ。今はとにかく病院へ急いで」 今のこの空気のお陰で、僕の言ったその言葉が持つ異常さは覆い隠されていた。 男子たる僕がお屋敷のプールに行こうとするなんて、そんなのどう考えても有り得ないことでしょう。 でも、誰も僕の言ったことを窘めなかったし、笑ったりする人もいなかった。 あぁ、今日あれだけ楽しみにしていたプールを見ることなくお屋敷を後にしなければならないとは。 お屋敷の建物を見上げて、思わずつぶやいてしまった。 「・・・・I shall return」 僕は必ず戻って来ます。 待ってて、舞ちゃん。 「ところでお嬢様、お屋敷に医務室があるっておっしゃってましたよね」 「えぇ」 「あの、そこに松葉杖があったら貸していただけませんか? 支えがないと、ちょっと立てないので・・・」 「すぐに持ってこさせますわ!」 門扉のインターフォンで連絡を取るお嬢様。 「千聖よ! 正門まで急いで松葉杖を持ってきて! あと、すぐに車を回すように伝えてちょうだい!!」 用件だけを口早に話すお嬢様のその言葉だけで通じるところに、このお屋敷のスタッフの優秀さが分かる。 さすが、岡井家。隅々までレベルが高い。 お嬢様が連絡をすると、驚くほどすぐ一人のメイドさんが姿を現した。 あの村上さんというメイドさんだ。 その手に、お嬢様が頼まれた松葉杖を持ってやってきてくれた。 あと、何故か首から船長さんの持っているような大きい双眼鏡を下げている。 やってきた村上さんにお嬢様が早口で切り出した。 「めぐ!ももちゃんさんが・・・・ケガをされてしまったの」 「えぇ、そのようですね。一部始終見てましたから。それで急ぎ仰せの物を持って馳せ参じました」 お嬢様の急いた口調と対照的に、落ち着いたその村上さんの口調。 なんで双眼鏡を下げてるのかと思ったが、なるほどその双眼鏡で千聖お嬢様を遠目から見守っていたんだな。 おおかた熊対策か。 もちろん、それはメイドとしての職務で、門前のお嬢様周りの監視をしていたんだろう。 (双眼鏡を使った覗きとか、そんなの有原じゃあるまいし) 「はいお嬢様、松葉杖」 村上さんが持ってきた松葉杖を手にお嬢様に語りかける。 「これ私が使ってたやつなんですよ。再び役に立つ日が来るとはね」 その松葉杖に特別の思い入れでもあるのか、村上さんはその松葉杖を見る目は何かを語っているようだった。 「めぐ、大丈夫かしら。大丈夫よね」 「それは分からないですよ。ちゃんとお医者さんに診察してもらわないと、何とも」 動転するお嬢様に、村上さんは落ち着いた口調で受け答えする。 引きつった顔の皆さんと対照的に微笑を浮かべた村上さんが僕に声をかけてくれた。 「あー、やっちゃいましたか。膝、ですか?」 「えぇ。古傷のところで」 「歩けます?」 「松葉杖を借りれば何とか」 そのサバサバとした言葉。 体育会系の人なんだな、村上さんは。 でも、それが僕の気持ちを落ち着かせてくれる。 僕も体育会系の中で過ごしてきたから、余計な気を使わないその空気の方がやりやすさを感じるんだ。 この状況で冷静に対応してくれる彼女のその言葉が、今はとてもありがたかった。 だって、まわりの3人の気を動転させていることに対して、僕は申し訳ない気分で一杯だったから。 たぶん彼女は、僕を含め動揺している人達を落ち着かせるために、わざとこのように振舞ってくれたんだろう。 「はい、タオルをお持ちしましたから。これで汗を拭いて」 「めぐ・・・」 「まぁまぁ、まずは落ち着こう」 村上さんが汗だくのお姉ちゃんに柔らかそうなタオルを渡す。 用意周到なメイドさん。さすがプロ。 お嬢様に急かされてここへやって来たはずだが、現場の状況をここまで把握しきっているとは。 「はい、熊井さんも。その姿、もうプールに入ってきたの?とかいってw」 「ありがとう」 真剣な顔つきだから怖い表情みたいになってしまっている熊井ちゃんだったが、メイドさんにそう声を掛けられたことでそのお顔がちょっと緩んだ。 状況を即座に把握して、的確な判断のもと冷静かつ迅速な行動に繋げること。 なるほど、この人はここ一番で頼りになるような人なんだろうな。 つばさ君が言っていた通りだ。 (つえーメイドな、あいつ本当にすげーんだぜ!)って。 ほどなくすると、黒塗りの車がやって来た。 すごい! リムジンだ。 こんな高級車に乗るのなんて、僕は初めてだよ。 門の前で停車すると、村上さんがすぐにドアを開けてくれた。 お嬢様に促されて、後部座席に乗り込ませてもらう。 すると反対側のドアから、お嬢様と熊井ちゃんが乗り込んできて僕の隣りに座った。 助手席にはお姉ちゃんも乗り込む。 って、何でこんなに皆でついて来るんだよ。(でも、これは嬉しい) 次へ TOP
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「では、Bグループ、行ってまいります!」 千奈美たちと入れ違いに、私とお嬢様は暗い校舎の中に足を踏み入れた。 「お嬢様、スリッパどうぞ」 「あ・・・ありがとう、ございます」 ピカピカのお高そうなローファーをちょこんと揃えたお嬢様は、深く深呼吸をしてから、来賓用スリッパに足を滑らせた。 「・・・怖いですか?」 「っ・・・そんな、違うわ!私は、あの・・・もう・・・中学3年生ですし・・・妹もいますし・・・だから、あの・・・」 最初は勢いよく反論してきたものの、お嬢様の語尾はどんどん尻すぼみになっていった。・・強がってるんだ、と思ったら、失礼ながらとても可愛らしく思えた。 前にももから聞いた話だと、千聖お嬢様は子ども扱いをとても嫌うらしい。 今年はしばらく離れて暮らしていた妹さんが家に戻ってきたこともあって、しっかりしなきゃ!って意識が強くなっているみたいだ。 「お嬢様、もし嫌じゃなかったら、手、つなぎましょうか」 だから私は、特につっこまずに手を差し出した。いずれはお嬢様が、“この人の前では強がらなくても大丈夫”って思えるような存在になれるように。今はその第一歩。 「雅さん・・・」 「ダメ?私はお嬢様と手つないで肝だめししたいなぁ」 「・・・・・ウフフ」 少しだけほっぺを赤くして、お嬢様の丸っこい手が私の手に納まった。 156 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/01/28(木) 17 19 41.18 0 「早く行って、さっさと戻ってきましょう。何にも起こらないといいなぁ」 「ウフフ。でも雅さん、あんまり怖がっていらっしゃらないのね。千聖はとても怖いのに・・・あっ」 「だっはっは。可愛いなぁ、お嬢様ったら!」 さっそく自爆して、「違うの」なんてフガフガしているお嬢様の腕を、軽くうりうり突っついてみる。 「あ、あの、皆さんには内緒にしてください。その、千聖が怖がっていたって・・・お願い、雅さん」 「うん、わかりました!それじゃ、お嬢様と私だけの秘密で。私、口は固いんでご安心を」 安心して表情を緩めるお嬢様の、どことなく幼い仕草の一つ一つがなんとも愛くるしい。中等部の萩原さんとか、縄梯子の有原さんとかが、お嬢様に夢中になっちゃう理由が何かわかる気がした。 「足元大丈夫ですか?お嬢様足小さいから、スリッパ脱げちゃいそう。階段、気をつけて」 「ウフフ、お気づかいありがとうございます」 うんうん、我ながらなかなかいいお姉さんっぷりだ。ぶっちゃけ、このきもだめしが千奈美や茉麻と同じグループだったら、私は結構ビビッて騒ぎまくってたと思う。 普段がボケッとしてるからか、私は年下の子がいるとやけにちゃきちゃきしてしまう。責任感ってほどじゃないけど、守ってあげなきゃって。 「・・・そういえば、雅さん」 「はい」 ペタペタ音を立てて階段を上っていく最中、ふとお嬢様が足を止めて、少しだけ顔を近づけてきた。 「どうしました?」 157 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/01/28(木) 17 20 45.68 0 お、お嬢様ったらいい匂いがする。これは・・・最近流行っている、魔女っこコスメのラインで出してるバニラのコロンだな。 そんな推理をしていると、奇遇にもお嬢様は「雅さんの、この香り・・・」と同様の話題を口にした。 「これは、すぎゃさんの使っていらっしゃるトワレと同じですね」 すぎゃ?す、・・・すがゃ・・・ 「あぁ、菅谷さん!」 私の頭に、色白でまつげが長くて可愛らしい、お嬢様の同級生の顔が浮かんだ。 菅谷さんはももとも仲がいいから、前にお嬢様も一緒に4人でお昼を食べたことがある。照れやさんらしく、ももやお嬢様とは普通に話すのに、私が話しかけると、あばばばばってテンパッちゃう面白い子だった。 「へー、人と匂い被ったのって、この学校入ってからは初めてかも」 私が毎朝、首筋と手首にシュッと吹き付けているホワイトムスクのトワレ。使いはじめてから、もう5年近く経っている。 中学のとき、背伸びして買ったかなりお高めな逸品で、今もお小遣いを圧迫しているんだけど、一度も切らしたことはない。これは、私にとって特別な香りだから。 「すぎゃさんは雅さんのファンなのですって。それで、同じ匂いを纏っていらっしゃるのかもしれないですね」 「えー、そんな、ファンって!照れるなぁ~」 「ウフフ。すぎゃさんたら、Buono!のステージもとても楽しみになさってるのよ。学内販売の前売り券も、行列の先頭で手に入れたそうですし。推しメン?の調査でも、雅さんのお名前を書いたとおっしゃってたわ」 そ、そんなに想ってもらえていたとは・・・!たしかに、菅谷さんのメイクや制服の着こなし方は、私のと似ているような気がしなくもなかったけど。 158 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/01/28(木) 17 21 48.15 0 「すぎゃさん、雅さんのお話をなさる時、本当に嬉しそうなお顔になるのよ。ぜひ、すぎゃさんのことをお見かけしたら、声をかえて差し上げてください」 「ええ、もちろん!」 かなりの人見知りな私だけど、これは素直に嬉しい。お嬢様の思いやりに応えるためにも、もっと菅谷さんに声をかけたりしてみようかな、と思った。 「そういえば」 そして、あと1階で生徒会室というところで、またお嬢様が立ち止まった。 「さっきのお話に戻ってしまうのだけれど・・・雅さんの、その」 「ああ、トワレですか?」 お嬢様はええ、と軽くうなずいた。 「その香りね、家のメイドが普段使っているのとも同じだわ。勤務中はつけていないから、なかなか思い出せなかったのだけれど」 「・・・そーなんですか・・・」 さっきも話題に出た、お嬢様の家のグロホラー好きのメイドさん。さっきは何気なく聞き流してたけど・・・何か、いろいろと心に引っかかるものがある。 「お嬢様、これはね・・・私の大切な友達と、おそろいで買ったトワレなんです。ちょっとわけありで、今はこじれて離れちゃってるけど。 なんか、お嬢様のおうちのメイドさんと、いろいろキャラが被るなぁ。顔も知らないのに、何気に気になる存在だなあ。なんて思ったりして」 159 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/01/28(木) 17 23 49.53 0 「中学の・・・?そう、ですか・・・」 お嬢様は急に黙り込むと、何とも言えない表情で私を見つめていた。 ももに聞いた話とか、自分で接してみてわかったけれど、お嬢様は大人しそうに見えて、結構、喜怒哀楽の激しいタイプ。だけど、今の顔からは、気持ちを読み取ることができない。 正直、めぐとのことは、お嬢様になら話してもいいと思っている。 ただ、それなら中途半端じゃなくて、全部伝えたい。千奈美や他の仲いい子たちも打ち明けたことはない話だけど、なぜか、お嬢様にはむしろ聞いて欲しい。自分でも理由がわからないけど、そう思う。 「あの・・・」 「・・・ごめんなさいね、そんなに引っ張るようなお話ではないのに。上に、参りましょう。そうだわ、最近、妹が反抗期のようで、注意をすると口答えが・・・」 でも、お嬢様はふっと表情を崩すと、その話題はなかったかのように、歩き出しながらまた別のお話を始めた。少し残念に思う反面、どこかほっとした。 今ここでめぐの話を始めたって、ボリューム的に考えて、全ては話しきれないから。ちょっとタイミングが悪いし、それはまた違う機会にでもすればいい。 妹さんの明日菜お嬢様に言い負かされてしまって悔しい、なんてお嬢様の愚痴を聞きつつ、私も「最近弟が仲良くしてくれない」という家族ネタを話してみた。下の子に冷たくされるのが悲しいって、姉ならではなの悩みを共有できて嬉しかった。 そんなお喋りをしているうちに、私たちはいつのまにか生徒会室の前まで来ていた。 おおざっぱな千奈美が閉め忘れたのか、ドアが全開になっているもんだから、肝試しムード台無し。 「入りましょう」 「ええ」 160 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/01/28(木) 17 25 06.41 0 直前まで、緊張感なく全然違う話をしていたせいだろうか。結局、暗い生徒会室に懐中電灯の光を巡らせても、まったく怖さは感じなかった。もちろん、怪奇現象もなし。 「何にもないですねー・・・お嬢様?」 「・・・え?あ・・・ええ、そうね。これなら、私でも怖くはないわ。ウフフ・・・」 お嬢様、心ここにあらずな感じだ。出だしはあんなに怖がっていたのに、今は全然違う事に意識が行ってるっていうか・・。 「じゃ、写真撮ってもらって帰りましょう」 2人揃って下を覗き込んだら、いきなりフラッシュが焚かれた。 「・・・ちょっとー!不意打ちやめてよ!ぶっさいくに写ってたらどうすんの!撮り直してよー」 わめく私に向かって、千奈美がにひひと笑って挑発してくる。 「だって遅いのが悪いんだもーん!それで、何かあったー??」 「んーん、別にー。じゃ、今から戻るねー!」 「いえっさーおつかれー!」 ――千奈美のやつ、自分はもう終わってるからってはしゃぎおって。これで最後の矢島さんも何もなかったら、記事作り苦労するの誰だかわかってんのかしら。 「行きましょう、お嬢様」 「え、ええ・・・」 「お嬢様、お疲れですか?ごめんなさいね、うちらが引っ張りまわしたから」 161 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/01/28(木) 17 26 04.36 0 相変わらずボーッとしてるというか、上の空なお嬢様。熱でもあるんじゃないかっておでこに触れたけど、異常はないみたいだった。 「あの、違うんです。ごめんなさい。ちょっと考え事をしてしまって・・・大丈夫ですから、早く舞美さんにバトンタッチをしましょう。・・・あの、雅さん」 「は、はい」 お嬢様は私の名前を呼んで、少し口を閉じたり開いたりしながら、ためらいがちに視線を向けてくる。 「どうしました?」 千奈美じゃないけど、そのお顔はまるで子犬のドアップみたいで、思わず頭をわしゃしゃしゃってやりたくなる。 「あの・・・今度、千聖の家にいらっしゃいませんか?」 とても遊びの誘いとは思えないような、深刻な顔でお嬢様は言う。 「え?あ、はい。それは、喜んで。お嬢様とも寮のみんなとももっと遊んでみたいですし」 その様子が少し引っかかったけれど、私はお嬢様自身にも、噂の寮にももちろん関心はあるからそう答えると、お嬢様は何故か沈んだ面持ちになってしまった。 「あの・・・あ・・えと、そうなのですけれど・・・あの・・・み、雅さんは・・・」 心なしか、声が震えている。お嬢様は、泣き出しそうな様にも見えた。 「どうしたの?私、なんかしちゃいました?」 「ごめんなさい・・・なんだか、私混乱して・・・・っあの!さっきおっしゃってた雅さんと疎遠になってしまったお友だちのことなのですけれど・・・」 「え?」 162 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/01/28(木) 17 27 04.78 0 ――♪♪♪ その時、静かな室内にケータイの着信音が鳴り響いた。・・・この着信音は、千奈美だ。なかなか戻ってこないから、催促の電話だろう。なんとなく感づいたらしく、お嬢様は口をつぐんだ。 「いやだわ、私ったら。皆さんをお待たせしていることですし、急ぎましょう」 「あ・・・はい」 千聖お嬢様は、スッと表情を元に戻した。・・・何か、こういうところは随分大人びているみたいだ。 「きもだめしは怖くなかったけれど、雅さんとたくさんお話できてよかったわ」 「ええ、私もです。・・・お嬢様、今度、本当に遊びに行かせてくださいね。噂のメイドさんにも会ってみたいな」 私がなにげなくそういうと、お嬢様は目を丸くしてから、「ぜひ、」と嬉しそうに笑った。 まだまだ知らないことばっかりの千聖お嬢様だけど、こうして少しずつでも距離を縮めていけたらいいな、と思った。 163 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/01/28(木) 17 36 12.62 O 作者です さるさんなってしまったのでコメレスだけ避難所に上げました 転送いただけると助かります 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/720.html
前へ いつもの通学コース。 駅でバスを降りて、ここから高校までは電車で二駅。 その改札口へ向かっていると、そこで見知った人を見かけた。 通勤通学の人波の中でも、ひときわ目立つその二つ縛りの髪型。 この人は何も変わらないんだな。 このフリフリの格好で大学にも行ってるんだ。キャンパスをこの原色の色使いで闊歩していると。 なんというか、さすがです。 その人も僕に気付いてくれた。 「桃子さん、おはようございます」 「おはよ、少年。これから学校?」 「はい、そうです。桃子さんはこれから大学ですか?」 「うん。だけど、その前にちょっと学園にね」 これから学園へ? 何しに学園へ行くんだろう? 「午前中は授業が無いから、学園に遊びに行こうと思って」 学園に遊びに行くって、この人なにか勘違いをしているのではないだろうか。 学園ってのは学校であって、大学生が暇つぶしのために遊びに行くような、そういう場所じゃないと思いますけど。 目の前の桃子さんは僕を見て何かを思いついたように、ニヤッと笑った。 嫌な予感がする。早々に退散しよう。 「そうですか。それじゃ僕はこれで」 「何言ってンの? 少年も一緒に行くんだよ」 学校に向かっているという僕の意向は完全無視ですか、そうですか。 このあいだの熊井ちゃんといい、この人達は僕の通学を邪魔するという行為に対して何の疑問も感じていないんだな。 「僕も一緒に? 何しに僕が学園に行くんですか」 「学園に着けばわかるよ。さあ、レッツゴー!」 再びバスの車内の人となり、今やって来たルートをまた戻って行く。 しばらくは静かな車中だったが、桃子さんが話しを切り出してきた。 「そういえば少年、その後どうなってるの?」 「それですよ。聞いてください桃子さん。この間なんて僕の学校にいきなり乗り込んで来たんですよ。たった一人で!」 「乗り込んで来たって、舞ちゃんが?」 「舞ちゃん? 違いますよ。舞ちゃんがそんなDQN行為をするわけ無いじゃないですか」 「もぉは舞ちゃんのことを聞いたつもりなんだけど? 誰の話をしてるの?」 あ・・・ 舞ちゃんのこと聞いたのか。 「あ、いや、熊井ちゃんのことですけど、えっと・・・」 「ふーん・・・?」 桃子さんがじっと僕を見つめる。 な、なんですか、その顔は? でも、いま僕は何で熊井ちゃんのことを考えたんだろう。 桃子さんの聞いてきたことに対して、一番最初に思い浮かんだ人が熊井ちゃんだなんて。 ひょっとして僕は・・・まさか・・・・ ・・・なーんてね。 つい先日、僕が学校で目の当たりにしたのは、もぉ軍団の人が起こしたあれだけ強烈な出来事なのだ。 そりゃあ、軍団長である桃子さんに報告もしたくなるじゃないか。 この間のメチャクチャな出来事を桃子さんに話す。 その話を軍団長は楽しそうに聞いてくれた。 そりゃあ聞いてても楽しいでしょうよ、当事者じゃなくて他人事なんだから。 「くまいちょー、頑張ってるねー。でも、そろそろもぉがいなくて寂しがってるんじゃない?」 「はぁ。どうでしょう」 「あれ?どうしたの? ため息みたいのついちゃって」 桃子さんが僕の顔を覗き込んでくる。 こうやって普通にしててくれると、優しいお姉さんに見えるんだけどな。 そんな年上の人を前にして、つい気持ちの弱いところをさらけだしてしまいそうになる。 軍団長・・・ その熊井ちゃんなんですけど・・・ 彼女のことを考えると、神経が高ぶってきてしまう。 「桃子さん!」 「な、なに・・・?」 「熊井ちゃん、ここのところもう完全に僕のことを子分扱いなんですよ・・・」 「あははは。すっかりその立場なんだ少年は」 「子分、舎弟、奴隷、召し使い。あんまりです」 「でも、そんなの今に始まったことじゃないんだし。くまいちょー、いったん決めたことはそう簡単には変えたりはしないよ。あきらめたら?」 「考えてみれば、僕が熊井ちゃんの舎弟というのは、とても体裁が悪いんじゃないだろうか・・・舞ちゃんの彼氏たる者が熊井ちゃんの舎弟では・・・」 「何をブツブツ言ってるの?」 「やっぱり僕が熊井ちゃんの子分では都合が悪いんです」 「えー? いつまでももぉ軍団の舎弟でいいじゃん、少年」 「それじゃダメなんです。僕はもっと強くならないと。舞ちゃんのためにも!」 「そ、そっか・・・うん、そうだ強くなるんだぞ少年。頑張ってもっとやりあってね。くまいちょーと少年のやりとりは面白いからねウフフフ」 「はぁ。だといいんですけどね」 なんか熊井ちゃんのことを考えると気分が乱高下してしまう。 これって、パニック症候群とかいう奴ではないだろうか。 僕はそんなに精神的負担を感じているっていうのか。 そんな僕を、桃子さんは(いつものように)心ゆくまで楽しんでいるように見えた。 「で、話し戻すけど、舞ちゃんとはその後どうなってるの?」 「そう、舞ちゃんの話しをしましょう!」 “舞ちゃん” そうだ、その固有名詞こそ僕の希望。 「お陰様で、最悪の事態だけは避けられたようです。あの後、一応僕に顔を合わせてくれましたから、舞ちゃん」 「そうなんだ。舞ちゃんは思ってることストレートに態度へ出す子だから、じゃあ本当に嫌われてはいなかったってことかー」 「はい!」 「じゃあさ、気持ちを伝えられた上でそれなら、それって進歩したってことじゃないの? 良かったじゃん」 桃子さんが優しく微笑んでくれる。 「桃子さん・・・」 桃子さんの見せてくれた優しさに、思わず感動しそうになる。 だが、僕もいいかげん学習した。 桃子さんがこのような優しい笑顔をくれる時、そこには必ずもう一つ裏の意味を含んでいるのだ。 そして、今回もどうやらその例に漏れないようだった。 「もぉに感謝してよね」 「え、えぇ、もちろん」 「言ったね。その気持ち、この後しっかり見せてもらうからね」 正門の近く、学園の塀沿いまで来ると、桃子さんは立ち止まった。 こっそりと正門の様子を探るように覗く桃子さん。 「思った通り。今日は風紀チェックやってる」 「風紀チェックある日とか、何で知ってるんですか?」 「もぉぐらいになると、カンでわかるんだよ。やってるかどうかぐらい大体の所は」 「あの、僕を連れて来たのって、ひょっとして・・・」 「さすが少年、話しが早いね。そう、いいんちょさんの気を引き付けておいて欲しいの」 「む、無理ですよ、そんなの。僕はなかさきちゃんから完全にチェックされてるみたいだから」 「そんなの知らないよ。さっき言ったでしょ。もぉへの気持ちを見せてもらうからね」 「そ、そんな・・・」 「ちょっとここで待っててね」 そう言うと、桃子さんは一人で正門に赴き、そこにいた風紀委員の人に声を掛けた。 その風紀委員の生徒さんたちは、桃子さんの姿を見ると一斉に狼狽した様子だった。 さすが桃子さん、有名人だなあ。 なーんて。他人事のように事態を見ていられた。まだこの時は。 そして、その生徒さんがあわてて報告に走った先は、風紀委員長さんのところだったようだ。 報告を受けやってきたなかさきちゃんは、桃子さんの姿を認めると、この遠目からでもわかるくらい顔がひきつっていた。 それに対して、ニッコリと笑う桃子さん。 ふたりは何かやりとりをしている。 あまり楽しそうなやりとりじゃないのがここからでも分かる。 すると、桃子さんがこっちを指差した。そう、この僕のことを。 こう言っている様子がありありとわかるその感じ。 (あそこで校内を覗き込んでる不審な男の人がいるんだけどぉ) 視線をこっちに向けたなかさきちゃん。 すると、なかさきちゃんは即座に行動を起こした。 彼女は鬼の形相になって僕に向かってきたのだ。 ひょっとして、桃子さんが言ったのはその程度のことじゃないのかも。 もっとひどい言いがかりをでっち上げたのかもしれない。 だって、なかさきちゃんがあの桃子さんを放置してまで僕に向かって来るぐらいなんだから。 いったい何を言ってくれたんだ、桃子さんは。 なかさきちゃんがずんずんとこっちに小走りで向かってくる。 風紀委員の人達も委員長さんをフォローするように後に続く。 僕には見えていた。 風紀委員の人達の後ろ側で、桃子さんがしてやったりという笑顔を浮かべながら、僕に軽く手を振っているのを。 誰もいなくなった正門を、桃子さんがくぐっていくのが見えた。 そして、その姿はゆっくりと学園の中に消えていった。 (なかさきちゃん、後ろーっ!!) そう叫びたかったが、迫ってくるなかさきちゃんの物凄い形相のその迫力に声が出てこない。 「ちょっとッ!! そこで何をやってるんですか!!」 誰何するなかさきちゃんの甲高い声を聞きながら、僕は無い知恵を絞って必死に考えていた。 いったい、この場をどうやって切り抜ければいいのだろう。 次へ TOP
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パリッ パリッ パリッ パリッ パリッ パリッ…… 夕食後の落ち着いた時間。私は食べ掛けのポテトチップスを食べていた。えっ? 太るって? ほっといてッ! パリッ パリッ パリッ パリッ パリッ パリッ…… それにしても今日は貴重な光景を見る事が出来た。特にあの三人の反応。 うちは傍観していたけれど気持ちはあの三人と一緒だ。 だからこうやって食べているんだし。そう、実はやけ食いなのッ!。 パリッ パリッ パリッ パリッ パリッ パリッ…… 大丈夫。明日はきっとこの状況を楽しんでいるはずだ。 適応力だけはいいんだから、うち。 「あ、無くなっちゃった…」 リl|*▽∀▽l|<やっつけ仕事じゃないんだよ保全 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「私、めぐと同じ高校に行きたいな。」 「ええ?」 中2の終業式の帰り道、めぐと2人でファーストフードのお店でだらだらと喋っている時、ちょっと勇気を出してそんなことを言ってみた。 中1、中2と同じクラスだった私たちは相変わらずべったりで、私はこの関係がいつまでも続いたらいいなと思っていた。 「もう、志望校は決まってるの?」 成績がそうとうヤバイ私と、常に学年トップ10に入るめぐが同じ学校に行くのはかなり難しいのはわかっていた。でも、めぐのためになら、大嫌いな勉強も頑張れる気がした。 「んー・・・一応。」 「どこどこ?」 「みんなには絶対内緒ね。みやびにだけ教えるんだから。」 そう言って口にしたのは、都心から少し離れたところにある、わりと有名な女子校だった。 やっぱりめぐが目指すだけあって、結構レベルが高い。しかも中高一貫の学校への外部受験だから、かなりの難関であることは間違いない。 「どうしてそこがいいの?」 「そうだなあ。・・・制服がカワイイから、かな?」 「何その理由!」 私の高速つっこみにあはは、と笑った後、めぐは少し真面目な顔になった。 「私ね、ぶっちゃけ高校にはそんなにこだわってないんだ。大学はもう行きたいとこ決まってるんだけどね。だから、行く高校なんて直感でいいなと思ったところでいいんじゃないかと。そんなもんじゃない?」 じゃない?と言われても、「行きたい高校」じゃなくて「行ける高校」を探すレベルの私には、雲を掴むような話だった。 「私と同じがいいって言うけど、みやびもあの高校受けるの?それならマジで勉強頑張なきゃ!」 「受験勉強、今からでもどうにかなるかな・・・」 「だーいじょうぶだよ!今日から一緒に勉強しよ?私もみやびが一緒だとすごい嬉しい!」 そんなめぐの言葉に後押しされて、私たちは春休みの間、毎日図書館に通って勉強した。 めぐは決して甘い先生じゃなかったけれど、うまく私の気分を盛り上げて、集中させてくれるのが上手だった。まだまだめぐのレベルには到達できていないけれど、この春休みの集中特訓で、私は自分の学力がレベルアップしてきているのを確かに感じていた。 「私さ、めぐに会えてよかったと思うんだ。」 「はあ?何いきなり。」 春休み最後の日、図書館の帰りに立ち寄った公園で、ふとそんなことを言ってみた。 「ほんとそう思うよ。めぐがいてくれたから、こうやって勉強も頑張れるし、友達もいっぱいできたんだと思う。めぐって本当すごいね。何でもできちゃうし、先輩たちにもすっごい可愛がられてて。」 「・・そんなさ、私がみやびに付き合ってあげてるみたいな言い方やめてよね。私だって、みやびとこうやって友達になれて、嬉しいんだよ。」 そう言って勢いよくブランコを漕ぐめぐの横顔が赤くなっていたのは、夕日のせいだけじゃなかったと思う。 「それにね、みやびと仲良くなりたいって子、結構いっぱいいるんだよ。みやびが気付いてないだけで。もっとさ、自分に自信持ってもいいんじゃない?」 「だめだよ、私なんか。ていうか、正直めぐがいてくれたら、それだけでいい。他の友達はいらない。」 「みやび・・・もう、そんなこと言って。」 私がこの時、一瞬めぐの笑顔が消えたことに気付いていたなら、私たちは今でも一緒にいられたのかもしれない。 「同じ高校、入れたらいいね。」 「・・・うん。」 その後2人して歌を歌いながら、元気よく立ち漕ぎをした。それが、めぐと心から笑い合った最後の瞬間だった。 翌日。 私はいつもより早起きして、学校に向かった。まだ人もまばらな校門を早足で通り抜けて、昇降口に張ってある掲示物の前に立った。 今日から3年生。ドキドキしながら、新クラスの名簿の中に自分の名前を探す。 「な・・・中島、中田・・・・あった!」 祈るような気持ちでその下まで目を通すと、そこに“村上愛”の文字。 また一緒のクラスになれた。3年間同じクラスだなんて、もう運命的な友情としか思えない。 嬉しさで緩む顔もそのままに、私はめぐにメールを打った。 始業式までに返事がくればいいな、と思っていたけれど、結局私のケータイがメールの新着を告げることはなかった。 「あ・・・おはよ、みやび。」 「めぐ、おはよ!メールしたんだけど、見なかった?また一緒のクラスだよ!すごくない?」 予鈴のチャイムが鳴ったところであきらめて体育館に行くと、めぐがテニス部の子たちとおしゃべりをしていた。 「あー、ごめんね。朝練あったから、バタバタしててケータイ見れなかった。そか、また同じクラスなんだ。よろしくね。」 そう言って笑うめぐに、私はどことなく違和感を覚えた。それは仲がいいからこそわかる、ほんのささいな変化だったのかもしれない。 「めぐ、なんか元気ない?」 「え?そう?そんなことないよ。・・・あっ!おはよー!」 めぐは後ろの扉から入ってきた、元クラスメートに大きく手を振って笑いかけた。その顔はいつもどおりのめぐだったから、私はさっきのことはとりあえず忘れることにして、めぐと一緒にみんなに挨拶をした。 「めーぐ、帰ろっ」 今日は初日だから、授業がない。始業式と新クラスでのホームルームが終わって、私はカバンを持ってめぐの席まで歩いて行った。 「あ・・、うん。あのさ、みやび。今日時間ある?話したいことがあるんだけど」 「うん、いいよ。そしたら、どっかでご飯食べながらでも」 「いや、今すぐ話したいから。来てくれる?」 めぐは荷物も持たずに、私に背中を向けて教室を出た。やっぱり、様子がおかしい。何か悩みがあるなら、私が力になってあげたい。 今思えばまったく見当違いなことを考えながら、私は少し早足のめぐを追いかけた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ 学校帰り、いま私はなっきぃと2人で歩いている。 「それでさ、今日の昼休みはお嬢様と2人っきりでランチタイムを楽しむつもりだったんだかんな。 そしたら、それを察知した萩原の奴がお嬢様の気を引こうとお嬢様の大好物ばかり詰め合わせた弁当を届けさせてきやがってさ、あの執事に・・・って、なっきぃ?」 「う、うん。ごめん、ちゃんと聞いてるよ」 生返事をするなっきぃ。 隣りを歩くなっきぃは、さっきから何かを考えているように上の空だった。 またあの時のこと考えてるのか。 「もう、なっきぃ・・・ まだ気にしてるの?」 「え? う、うん」 「気にしなくていいんだって! あれぐらいのこと」 「そうはいっても、その、やっぱり暴力は・・・この私がそんなこと・・・」 「あんなの、まぎらわしい会話をする方が悪いんだかんな。単なる誤解が原因だったんだからさ、早く忘れちゃえばいいのに」 「うん、そうなんだけど。でも、やっぱり何か引っかかるの」 「引っかかるって、何が?」 「誤解だったっていうのはそうなんだけどね。でも、友理奈ちゃんは否定してたけど、本当に違うのかな、って」 「ん? 違うって何が?」 心配そうな顔をするなっきぃ。 なっきぃは熊井ちゃんのこといつも気にしてるんだな。 顔を会わせるたびにキーキーやりあってるのにw 本当に仲のいいことで。 「本当にも何も、あれは誤解だったんだから違うんでしょ」 「うん。そうなんだけど。でも、なんかね状況証拠が揃ってきてる気がして」 「状況証拠?」 さっきから奥歯に物が挟まったような言い方ではあるが、なっきぃの言いたいことはわかった。 熊井ちゃんとあの男子の二人の関係のことだ。 あの二人の関係が、その、見てると段々ちょっと疑わしくなってきたと、そう言いたいんですね、なっきぃは。 さっきからなっきぃが引っかかってるのは、まさにそこなんだろう。 「ゆりなちゃん、あの男子と付き合ってたりしないよね」 あ、言った。 ストレートに言ったよ、この風紀委員長さん。 でも、まさか、ねぇ・・・ そんなの全く想像ができない。 なっきぃ、本当にそう思う? 私には全く思い当たるフシがないんだけど。 だって、熊井ちゃんって、確かどっちかというとかなりの面食いさんだったはずだ。 前に本人から聞いたことあるのは、好みのタイプはカッコよくてスポーツマンの男子だったはず。 暗いのは嫌、とも言ってたっけ。 だから、あの少年が熊井ちゃんの好みに当てはまっているとは、奴のあの外見からして、とてもそうとは思えない。 まぁ、アホっぽいだけに暗くはなさそうだけど。 「まさかぁ? 熊井ちゃんは子分だって公言してるじゃん。 それにあの男子、好きなのは舞ちゃんなんだよ」 奴が舞ちゃんのこと本当に好きなのは間違いないと思うし。 変わった趣味だなあ、とは思うけど、そこはそれ人の好みはそれぞれだ。 でも、男って生き物はその点では信用できないからなぁ。 平気でいろいろな子に対して気を持ったりするからね、男ってやつは。 「でもさ、舞ちゃんはハッキリと彼のこと振っちゃったんでしょ。それで・・・」 「うーん・・・ 私には何かピンと来ないんだけど。だいたい熊井ちゃんの方はどうなの?あの男子が好みだとでも?」 「それはね、友理奈ちゃんって、たまに何考えてるのか分からないことあるじゃない」 「それは、たまにというかいつもというか・・」 「例えば、可愛くない犬を拾ってきたとしても、ずっと一緒にいたら情が移るってこともあるでしょ」 なっきぃの中では何がひっかかってるんだろう。 「そうだけどさあ。でもやっぱり違うよ、そういう雰囲気じゃないもん、あの二人は」 「それはさ、私たちに関係を悟られないようにわざとそうしてるのかも・・・」 「じゃあ、もしあの二人が付き合ってるような関係だったとしたら、なっきぃはどうするつもりなの」 「・・・わからない。ゆりなちゃんの気持ちを尊重したいけど・・・わかんないよ、そんなの」 こういう話題は得意じゃないんだろう。 なっきぃの言い方は、ますます歯切れが悪くなってきた。 「うーん、やっぱり私は違うと思うんだけどなあ」 「わたし本当に心配なの。ゆりなちゃんのこと」 「ゆりなちゃんって、外見は大人っぽく見えるけど、全然そんなことないんだから」 「物事をよく分かってますって顔してるけど、びっくりするぐらい常識を知らないことが多いのね」 「まぁ、熊井ちゃんのことよく分かってるなっきぃがそう言うんなら」 「それに、よく言うでしょ。高校生ぐらいの男子の頭の中って、あのことだけでいっぱいらしいし」 あのこと、って何ですか?優等生さん? 「あのことって、どのこと?」 「もう・・・栞ちゃん、分かってるくせに」 「まぁなっきぃの言ってることは間違ってはいないかんな。男ってやつは本当にどうしようもないからね。それしか頭にないのかよって思うよ」 まぁ、お前が言うな!って、皆さんツッコみたくなってるんだろうけどな! 「で、さっき言ってた状況証拠って、なに?」 「うん。改めて思い返してみたら気付いたんだけど、あの二人ってしょっちゅう一緒にいるよね」 「嗣永さんの軍団がらみなんでしょ。それで嗣永さんが卒業しちゃったから2人っきりのことが多いんじゃないの? どうでもいいけど」 「それにしたって、いくらなんでも一緒にいすぎじゃない? 同じ学校でもないのに」 「でも、それぐらいのことは普通にあったりするよ。女子高だと珍しいのかもしれないけどさ」 「それでね、このあいだのことなんだけど・・・」 「うん?」 「・・・って、ごめん。今のは違うの。何でもないの。今のは聞かなかったことにして栞ちゃん」 「それは無いかんな! そこまで言いかけておいて!!」 「・・・ごめん」 「実はね、まさかとは思うんだけどね・・・ わたし見ちゃったの。このあいだ駅前の病院から友理奈ちゃんが・・・」 そう言いかけたなっきぃの動きが急に止まってしまった。 目を見開いたまま固まってしまっている。 その原因はすぐ分かった。 いま私たちの目の前に現れたこの人のせいだ。 この人に会うのは、私はとても久しぶりだかんな。 在校時と全く変わっていない、その風貌、その雰囲気、その異常性。 一度目にすれば二度と忘れられないキャラクターのその人が私達の前に出現したのだ。 私達の前に現れたハデハデしい格好のその人物。 なっきぃの天敵。 次へ TOP
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前へ 桃子さん、ここでその2人と待ち合わせているって言うのか。 ってことは、早急にこの場を離れる必要があるんじゃないか? のんびり桃子さんと会話をしてる場合じゃないだろ、僕は。 「軍団の皆さんがここで待ち合わせを・・・」 「そうだよ。もう来てもいい頃なんだけどぉ」 ・・・・まずい。まずいだろ。 もう猶予は無い。急いで桃子さんにお別れの挨拶を交わしてここから立ち去らなければ。 「そうですか・・・ それじゃ桃子さん、僕はこれで失礼しm 「おーい、ももー! あれ?何で一緒にいるの?」 嫌な予感、的中。 僕の言葉は現れた熊井ちゃんにぶったぎられる。 なんてこった・・・ こんなところでもぉ軍団勢揃いなんて。 なーんか嫌な予感がする。ていうか嫌な予感しかしない。 「ここでね偶然会ったんだ。なんかね誰かにあげるプレゼントを探しに来たんだって」 「ちょ・・・桃子さん!」 「誰へのプレゼントなんだろうねイヒヒヒ」 ニヤニヤとしている梨沙子ちゃん。 でも、答えは知られてないはず。いま梨沙子ちゃんは軽い気持ちで僕をからかっただけだろう。 うん、だって梨沙子ちゃんには絶対分からないはずだ。 僕はそっと熊井ちゃんの反応をうかがってみた。 熊井ちゃんも桃子さんの言ったことに反応を示しているようだ。 やっぱり感づかれちゃったかな・・・ だが、彼女は梨沙子ちゃんとは全く違う点に注目したようだった。 「なに? それじゃあ小金を持ってるんじゃん!」 そこ、なのか・・・ 彼女のその反応に、ホッとしたような、ちょっとがっかりしたような・・・ そんな僕の複雑な心境など全く分かっていないだろう熊井ちゃんが続けて言ったこと。 「ちょうどいいや。じゃあ今日は予算の心配をしないで存分に遊べるね!」 いや、チョトマテクダサイ。 それはどういう意味なんでしょう。このお金は僕が頑張って稼いできたお金で。 なぜ稼いだかというとそれはですね・・・ 「さっき少年に教えてもらったんだけど、割りのいいバイトしたみたいでたんまりと持ってるみたいだよ」 「それだけあれば豪遊できるじゃん。これはもうザギンでシースーだね!!」 「すごいゆ!」 「3人で銀座でお寿司を食べても、それでもまだ資金の半分は残るんじゃない? 凄いねー」 銀座で寿司とか言い出してるし。 ・・・って、おい! 3人って何だよ!! まさかとは思うけど、僕の金なのに僕には食べさせてくれないつもりなのか! まさか、そんなことは無いよね。常識的に考えて。 でも、相手は熊井ちゃんなんだ。常識の通用する相手じゃry 「寿司を食べたら残りのお金で、次はホストクラブに行って遊ぼうよ!」 人の金だというのに、この人には遠慮という言葉は無いのだろうか。 しかも、そんなところに行こうだなんて。よくそんな発想が出てくるな、信じられない。 そんなにホストクラブが好きか、熊井。 冗談だろ、と思っていたこのやりとり。 信じられないことに、本当に銀座に連れて行かれ寿司を食べてきたのだ。 他人の金の使い道を勝手に決めたりしてさ、あろうことかそれをその通り実行するなんて・・・ 3人もいるんだから誰か一人ぐらいは止めろよ。そんなのはおかしい、って。 この人たちに常識というものはないのだろうか。僕は泣きそうになりながら、そんな愚問を心の中で繰り返していたのだった。 その後に起きたことは、あまり思い出したくない。 早く忘れてしまいたい記憶として封印してしまいたいのだ。 美女3人を引き連れて銀座を豪遊。 そういう表現をするととても聞こえがいいのだが、実際はそんないいものでは無かった。 だって、僕はまるで召使いのような扱われ方を終始されたのだから。 だから表現としては、美女3人に引き回される召使い、という方がぴったり来る。 こんなことはあまり言いたくないが、銀座で寿司なんてものが食べられたのは誰のお陰だと思ってるんだろう。スポンサーは僕なんだぞ。 そんな僕への感謝の気持ちというものが、彼女たちからは全くと言っていいほど感じられなかった。 まぁ、いいけど。 僕も寿司を食べることを、熊井ちゃんが許可してくれただけでも良しとしないと(僕の金なのに・・・) タクシーで乗りつけた先は、見るからに高級そうなお寿司屋さんだった。 何故そこなのかというと、行き先を尋ねるタクシーの運転手さんに「銀座の高級な寿司屋まで!」とドヤ顔の熊井ちゃんが告げたからだ。 ちなみに、タクシーに乗ったのは、「銀座に行くんだったら、駅から歩きじゃなくてタクシーでしょ!」と言った熊井ちゃんの提案による。 僕はこの店の高級な雰囲気に飲まれて緊張が解けなかった。 だって、この店はおおよそ高校生が入るような店では無かったんだから。 その高級な雰囲気に緊張を覚えないわけがない。 だが、僕と一緒に来ている人たちは、至って気軽な感じでこの高級店に足を踏み入れた。 まるでガ○トかジョ○サンにでも入るかのように。 この人たちには「緊張する」とか、そういう感情ってのは存在しないんだろうか。 しないんだろうなあ。 ただ、梨沙子ちゃんだけは、少し緊張しているみたいだったけど。 きっと彼女だけが全うな神経の持ち主なんだろう。 梨沙子ちゃんの常識的な感覚こそが僕の最後の希望だ。もし彼女がいなければ僕は早々に精神的崩壊に追い込まれていたかもしれない。 一方、梨沙子ちゃんを除いたもぉ軍団の人たち、つまり軍団長と自称リーダーは実に堂々とした振る舞いでした。 こういう店でも決して自分らしさを失わないその態度、本当に堂々としていて清々しいほどだった。 この貫禄、この2人ってホント何者なんだろう・・・ 彼女たちと違って、僕はそんな高級な雰囲気に圧倒されていたのだが、そこで出てきた寿司はとてつもなく美味かった。 僕だけ並だったんだけど(彼女たちはもちろん特上)、それでもこんなに美味い寿司は初めて食べたよ。 美味しいものを食べると、気持ちも落ち着いてくる。 時間とともに、これは本当に現実の出来事なんだ、と思うことができるようになってきたわけで。 ようやく落ち着いて周りを見ることもできるようになった。 銀座の高級店ってのは、こういう雰囲気なんだなあ。僕なんかには当然全く縁の無い世界だから。 千聖お嬢様のような方が来るような所だろ。あぁ、一緒なのが千聖お嬢様だったら、どんなに・・・ ふと気付いたことがある。 そんな銀座の高級すし店のこの雰囲気に、一番馴染んでいるのが実は梨沙子ちゃんだった、ということに。 最初は緊張していた彼女だけれど、梨沙子ちゃんのなんとなくゴージャスな見た目と雰囲気が、この店にあっても違和感なく馴染んでいるよ。 なんていうか、銀座のマダムみたい・・・いや、銀座のマダムってのがどういうものなのか僕はよく分からないんだけど、雰囲気で・・ そんなことを考えることも出来る程度には、ようやく僕にも余裕が出てきたようだ。 自分の置かれている立場、それが実は相当に幸せを感じて然るべきだということにも思い至ることができるようになった。 だって、僕と一緒にテーブルを囲んでいるのは、こんな美女3人なんだから。 でもそれは、考えれば考えるほど逆に非現実感を感じただけだったけど。 僕は何でこんな美女たちと同席できているんだろう。 うん、これは夢なんだ。そう、夢だったらいいのに。夢であってほしい・・・・ そんな僕の願いを逆撫でするかのように、自称リーダーさんは店員さんを呼んで追加の注文を頼んでいる。 まだ頼むのかよ・・・ お願いだから予算というものを考えて頼んで下さいね、熊井ちゃん。 って、店員さんを呼ぶときのその大きな声と大きなジェスチャー。 やっぱりこの人は、この店の雰囲気とかには全く飲まれたりなんかしていないんだな。 お茶のおかわりも遠慮なんかせず頼んでいる。やはり大きな声で店員さんを呼びつけて。 大きな熊さんの大きな態度。どこにあっても彼女のその存在感は大したものだよ。 なんというか、さすがの貫禄としかいいようがない。 まぁ、それがこういう店での振る舞いとして正解なのかは、僕にはまだ経験値が不足しているのでよく分からないけれど。 でも、彼女のやることはいつだって大体間違ってるから、たぶん今回も間違いなんだろう。 そうかもしれないが、それが間違ってるのかどうかなんて、そんなの彼女にとっては関係ないことなんだ。 いつだって大切なのは、彼女がそれをやりたいのかどうか、ただそれだけなんだから。 熊井ちゃん、さすがだよ。 本当にさすがだ。それを見ていたら、なんか楽しい気分にもなってきたりして。 そんな、僕がようやくこの場を楽しめるようになった時には、もう上がりを飲んでいる時間になっていたのだった。 何とも不思議な時間を過ごしたのち、支払いを終えた僕に熊井ちゃんが言葉をかけてきた。 お、“ありがとう”とか“ごちそうさま”とか言ってくれるのかな。 「ねぇ、おみやは無いの?」 「・・・・・・有るわけないでしょ。もうスッカラカンになっちゃったんだから!」 「「エエエエェェェェエエエエエ!!」」 声を合わせるピーチベアーズ。 この人達のメンタルって一体どうなっているんだろう。 僕が全ての支払いをしたというのに、それを当然のように思っているかのような彼女たちのその態度。 軍団内の立場の違いというのは、ここまで徹底されているものなんだね。 さて、心配したホストクラブのことだが、そんな所には寄らずに帰ることができたのでホッと安心した。 でもそれは、決して彼女たち(というか熊井)が遠慮なんかしてくれたというわけじゃなくて。 ご覧のように、銀座の寿司というものが予想以上にお金がかかるところだったというわけで、予算を使い切ってしまったからだ。 「やっぱりお寿司を4人で食べたから予算を使い切っちゃったんだよ!」 そんなことを言って、不満そうな態度を隠そうともせず僕を睨みつけてくる熊井ちゃん。 だからホストクラブに行けなくなっちゃったじゃない!とかブツブツ言っている。 悪いのは僕だと言うのか。 彼女のその言い方だと明らかにそのように聞こえるんだけど。 追加で注文とかバンバン頼んでたのはいったいどこの誰なんだよ! 「ちょっとッ! 反省しなさいよ!全くもう!!」 そんな、熊井ちゃんが僕を不条理(ですよね!)に責め立てるやりとりをじっと見ていた梨沙子ちゃん。 彼女が小声で桃子さんに何か問いかけているようだったけど、そのヒソヒソ話しは僕の耳までは入ってこなかったんだ。 「あ、あのさー、もも? それでいいのかな」 「ん?いいって、何が?」 「だってこんなにご馳走になっておいてさ、その扱いは、ちょっとさ、かわいそうじゃないかな・・・」 そのヒソヒソ話しに大きな声で割って入ったのは、この人だった。 「いいんだよ、梨沙子。男ってやつはね、こうやってお金を豪快に使うこと自体に快感を覚えるんだから」 「そういうものなの?」 「そうだよ! うちらはこいつにその快感を味わわせてあげたんだから、むしろうちらに感謝してもらいたいぐらいだぜ」 「ウフフフ。くまいちょーが少年のことそう言うんだから、少年もきっと同じ考えだよ。くまいちょーの言うことなんだから。ね、少年?」 なぜ僕がそんな超絶熊井理論に賛同しなければならないんですか、桃子さん。 彼女の言う快感を覚えるってのは、それは自分の為に大金を使ったときであって、決して今日のこの状況はry ・・・・・って、やめよう。そんなことを言っても始まらない。ネガティブに落ち込むだけだ。 僕は今、熊井ちゃんのいつも通りの暴走で結局こうなってしまったか、ともはや諦めの心境だった。 だが、ある別の思いが沸々と湧き上がってきていたんだ。桃子さんの言った言葉、その口調、その笑顔。 熊井ちゃんばかりが当然のように目立っているが、実は黒幕は桃子さんなんじゃないかという疑念が。 今日のこの一連の出来事、実は桃子さんのシナリオ通りじゃないでしょうね。 この自称リーダーのメチャクチャな行動さえも、実は軍団長の想定通りだったのではないだろうか。 今日僕と出会ったとき、その時にここまでのストーリーを瞬時に思い描いたんじゃ・・・そこまで僕は妄想させられるんだ、この桃子さんを見ていると。 僕と目が合った桃子さんが満面の微笑みを僕に向けてくれた。 「ウフッ?」 ダメだ・・・・僕はこの人にはとても敵わない。今日もそれを思い知らされただけだった。 そんな僕の横では、熊井ちゃんがこれまた爽やかな笑顔で高らかに宣言していた。 「もぉ軍団、いいことしたね!! 一日一膳、今日も達成だ!!」 僕はもう、笑うしかなかった。 今日、この3人組に出会ってしまったのが運の尽きか。 不用意に大金を持って出歩いたりしたから、偶然出会った3人組にカツアゲなんか食らうんだ・・・ というわけで熊井ちゃんへの誕生日プレゼントを買うそのお金は何故か本来の目的に使われることなく消えてしまった。 しかも、カツアゲをしてきたのが、当のその本人という。なんだこれ。 どうしよう、誕生日はもう明日なのに。 プレゼントも買えなかったし、これからそれを買おうにも僕はもうスッカラカンになってしまったのだ。 もう泣きそう。 そんな僕の気持ちを表しているかのように、夕方から雨が降ってきた。 いま僕の頬を濡らしているのは、その雨の雫だったのだろうか、それとも・・・ だが、神様ってのは本当に居たんだ。 そして、神様はいつだって善人の味方なのだった。 神様はそんな僕の事をちゃんと見ていて下さっていたのだから! 次へ TOP
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「………お嬢様、料理が冷めてしまいますよ」 「やっぱりあそこの…えっ? 何か言ったかしら?」 「料理が冷めてしまいますよ。デザートを召し上がる時では駄目ですか?」 「だってだって楽しかったんですもの♪ なっきぃは楽しくなかったの?」 「……いえ、楽しかったですが」 劇を見終わり少し遅めの昼食を取っている私達。 さっきからお嬢様はこんな感じ。一口運ぶ度に手が止まって語尾に必ず「ウフフッ」と 付きそうなテンションの高さで私に畳み掛ける様に話している。 ここで大まかに劇の内容を説明すると…… ☆ ☆ ☆ 喫茶店ハル。この場所は登田はる、清乃香織、萩緒キイ、寺岾和泉、隈野愛美、登田洵の 憩いの場所でもあり集合場所でもある。 ひょんな事から無料券を手に入れた六人が軽い気持ちで訪れた『占いの館』には無料券を くれた占い中毒者で和泉の同級生の渓山朋世がいた。 胡散臭い占いが並ぶ中でキイは一人の女性占い師・紗々と出会う。 数日後に朋世が喫茶店ハルを訪れて和泉を連れ出す。何でも占いの結果の条件に和泉が 当て嵌まったらしい。呆れる五人を余所に和泉は朋世と行動を共にする。翌日、朋世と 和泉は学校に来なかった。 雨の中を懸命に二人を探す五人は『占いの館』に辿り着く。そこには「占いを信じて行動 してきたのに幸せになれないッ!!」と言い放つ朋世と一緒に行動していた和泉の姿が あった。そんな朋世にキイがある提案をする。「私が占ってあげる。渓山さんは私とその 占い師さんどっちを信じる?」 ☆ ☆ ☆ う~ん、こんな感じかな? もっと詳しく知りたい人は要望を出してみるといいかもよ? ……って話が逸れちゃった。とにかくお嬢様は劇の感想を語りたくて語りたくて仕方ないのだ。 「……ウィンドウショッピングをする時間が無くなりますよ」 「えっ? そ、それは困るわ。せっかくの機会ですもの」 「なら召し上がって下さい。デザートの時は少しゆっくりで構いませんから」 「……そうね。そうするわ」 少し残念そうな顔を浮かべながらもお嬢様は食事を召し上がり始めた。その後に 持って来てもらったデザートでまた嬉しそうな顔をしていたけれど。 「……満足出来ましたか? お嬢様」 「えぇ。……いよいよウィンドウショッピングね」 「こういうのが見たい! というのはありますか?」 「小物! 雑貨屋さんの小物が見たいわ!」 「キュフフ♪ 私も最近は雑貨屋さんの小物を見るのが好きなんですよ」 お昼にする前に取っておいたフロアガイドを広げてお嬢様と覗き込む。 「この階と…この階にもありますね」 「なら、早く行きましょう。私、なっきぃとお揃いの物が買いたいわ」 「キュフフ♪ 嬉しい事を言ってくれますね」 「ほ、本当に買いたいのよ! ほら、行きましょう」 席を立ち店の出口へと向かうお嬢様を伝票を持って慌てて追いかける。 「ま、待って下さいよ。お嬢様~」 以上です 配役も変えたので紹介だけでも 鬼山先生のフルネーム調べるのにパンフ探しましたw 戸田ハル(えりか) … 登田はる(恵) 清野佳織(舞美) … 清乃香織(麻衣美) 萩尾きい(早貴) … 萩緒キイ(早季) 寺山泉水(愛理) … 寺岾和泉(愛利) 熊野麻奈美(千聖) … 隈野愛美(千智) 戸田純(舞) … 登田洵(麻衣) サーシャ … 紗々(えり花) 谷山先生 … 渓山朋世(栞那) 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ “こんな時間から外出なんか出来るわけないでしょ!! 友理奈ちゃんも早く帰らなきゃだめじゃない!!” 熊井ちゃんの提案でしたが、なかさきちゃんが来てくれることなんかもちろんありませんでした。 なかさきちゃんもなかさきちゃんで、相変わらず中学生のようなことを言ってるし。 もう大人なんだからさ・・・ そのことを、ちょっと世間知らずの彼女に一度この僕が直々に教えてあげる必要がry そんなお堅い彼女のお説教に対して、素直にそれを聞いたりするような大きな熊さんではないわけで。 ハイになっている熊井ちゃんの脈絡の無い演説を、駅前のファミレスで僕は一人延々と聞かされることに。 早く帰りたい・・・ やっと熊井ちゃんから解放され帰宅したとき、僕はもう心身ともにクタクタだった。 でも、まだ体を休めるわけにはいかない。僕にはまだやることがあるのだ。 ビデオカメラに録画されているBuono!のライブ映像を取り込んで再生すると、モニターにいきなり愛理ちゃんのアップが映る。 うわぉ!愛理ちゃん、ひゃっほう!! 思わず顔がデレーッと弛緩してしまったw このライブ映像、予想通り素晴らしいものだった。 そこには愛理ちゃんの生き生きとした表情が見事に捉えられていて。 愛理ちゃん、なんて神々しい・・・ モニターいっぱいに映る彼女の生き生きとした表情、そして彼女の澄んだ歌声が疲弊した僕の気力を蘇らせてくれる。 疲れ切っていた僕がほとんど徹夜の作業をこなすことが出来たのは、こうして愛理ちゃんの映像が励みとなったからに他ならない。 だがしかし、その編集作業は予想外に大変だった。 それは何故かといえば、撮影された映像には非常に偏りがあったからだ。そのことには再生を始めてすぐに気付いてはいた。 これ、ほとんど愛理ちゃんしか映ってないじゃないか・・・ 思い出したように雅さんも映されてるけど。桃子さんに至っては・・・ どうするんだよ、これ。 執事さーーん!! まぁ、これを撮影したカメラマンの気持ちはわかるけど。ライブのときの愛理ちゃん、一度目にしたらひたすらその姿を追っていたくなる。 この愛理ちゃんの映像、ホント癒されるなあ。見ているとただもうひたすら幸せを感じる。個人的にはそれだけでもう十分なんじゃないかと思うよ。 でも、もちろんそういうわけにはいかないんだ。 このライブはりーちゃんの誕生日記念ライブなのだ。まず彼女に喜んでもらえるものでなければならない。 だから、まず雅さんの映像を最優先で抜くことに専念する。 速攻USBそして通常盤はこれで何とか形になるだろう。梨沙子ちゃんにも納得してもらえそうだ。 (りーちゃんは雅さんが映ってさえいれば満足してくれるよ) そしてソロ盤の方も愛理ちゃんは全く問題ないし雅さんも何とかなりそうだな。 問題は、メンバーの中でただ一人だけアップの映像が圧倒的に少ない人・・・・ そう、桃子さんだ。 ソロアングルDVD、桃子さんのはいったいこれでどうやって作れと? はたして桃子さんを納得させられるクオリティーのものが作れるのか、そのソロDVDは? 脳裏に終演時の桃子さんの意味ありげな笑顔がよみがえる。 僕は身震いした。何が何でもやり遂げなくてはならない。 でもまあやるしかないわけで。 一見無理だと思われるようなことでも、人間追い詰められれば大抵のことはこなせるものなんだ。自分の経験上、それは間違いない。 しょうがない。固定カメラが捉えた引きの映像から何とかするしかないか。 (ちなみに、この引きの映像、最前の熱狂的なヲタの方々の雄姿がバッチリと入っていらっしゃる) そんな感じで桃子さんのソロ盤は編集に相当手こずりそうだが、まぁいい。ソロDVDの編集は後でじっくり取り掛かろう。 まずは速攻USBを完成させなくては。 しかし、眠い・・・ でも頑張らないと・・・ 速攻USBは明け方近くになって完成した。 その完成品を納品するため、僕は大学に向かう前に今いつものバス停で待っていた。熊井ちゃんに指示されたその通りに。 “ブツが完成したら、朝バス停で待ってて。そしたら声を掛けてくる学園生がいるから、彼女にそれを渡してくれる? そこで任務完了だから” そう、今日からは学園も新学期が始まるんだ。 登校してくる学園生のその人が僕に声を掛けてくるのを待てばいいんだな。 寝不足もあってぼんやりとしながらしばらく待っていると、不意に背後からいきなり声を掛けられる。 うわぁ! びっくりした!! 後ろに立たれていたことに全く気付かなかった。いつの間に・・・ びっくりしながら振り向くと、そこには長い黒髪もお上品な学園生が立っていた。青いチェックの制服に身を包んだ高等部の生徒さん。 「おはようございます。うふふふ」 僕に声をかけてきたこの人が、熊井ちゃんの言った商品を学園に配布するべく彼女が指定してきた人。 その艶やかな長い黒髪。すっきりとした顔立ちも見るからに上品で、いかにも学園生といった風情のその生徒さん。そう、譜久村さん。 「熊井さんから伺ってました。お疲れ様です」 「お、おはようございます。み、みずきちゃん」 「さっそくですけど、完成品は?」 「はい。これがその例の物です」 徹夜で完成させた速攻USBを聖ちゃんに渡す。 「あらあらw こうやって見るとすごい数ですね。こんなに予約が入ってるなんて。さすがBuono!の皆さん」 「ソロアングルの方はもうちょっと待っててくださいね。桃子さんのソロDVDが出来たら、みずきちゃんには真っ先にお渡ししますから」 「御配慮ありがとうございます。素晴らしいライブでしたし、とても楽しみにしていますね」 「えぇ、本当に素晴らしいライブでした!・・・って、まだ見ていないのに、どうしてそれを?」 「どうしてって? それはですね当日はワッch・・・ わたし一人スレもチェックしていますので。 そちらにレポを上げていた方もいましたし、いつものように隊長さんのとてもクリアな音質の音源だって。うふふふ」 深い笑みをたたえる団地妻。 熊井ちゃんのよく言う闇のフィクサーって、むしろこういう人のことを言うんじゃないのだろうか。 そんな聖ちゃん。いつものことながら、そばにいると何となく緊張を覚える。 うん、熊井ちゃんに感じるそれとは全く違う意味だけど、聖ちゃんが醸し出している今のこの雰囲気。こ、怖いよ。 雰囲気を変えよう! 「み、聖ちゃん、その制服!高校生になったんですね」 「はい。いよいよ私も高等部です。気が引き締まる思いで」 「ますます御活躍される機会が増えますね」 「えぇ。いつまでも先輩方に頼ってばかりではいられないですから。でも、本当にこの学園は面白い人が多くて。これからも楽しみですわ」 僕らが会話を交わす横をそのとき通りがかった中等部の生徒さん。顔見知りなのか聖ちゃんに挨拶する。 「おはようございます譜久村さん」 「香音ちゃんおはよう」 無邪気な笑顔で聖ちゃんに挨拶した彼女。 これまたとってもかわいらしい子だな。(本当に学園生ってカワイイ子が多いよね!) そのまま足を止めることなく行こうとする彼女に、聖ちゃんが声を掛けた。「待って、香音ちゃん。一緒に行きましょう」 「それではこれで失礼しますね。熊井さんによろしくお伝えください」 僕にそう告げると、足早にいま声を掛けた彼女に駆け寄っていく。聖ちゃんのその後ろ姿、美しい長い髪がまた何と言うか男心をくすぐるんだ。 “今日のクラス発表、鞘師さんと一緒のクラスだといいわね。でも、香音ちゃんいい表情してる。それなら大丈夫かな。うふふふ” 聞こえてくる聖ちゃんの声が小さくなっていく。 彼女達のその後ろ姿を見送ったあとも、僕はそのままバス停で待ち続ける。 そう、高校時代そうやって彼女が来るのを待っていたのと同じように、いま僕は待っていた。 そして、そう時間をおくことなく彼女はやってきた。 舞ちゃん。 やってきた舞ちゃんは、お嬢様と御一緒だった。その見慣れた光景。今年も全く変わっていない。 千聖お嬢様も御一緒か! やって来たお嬢様のお姿を見て、昨日のことを話しかけたいな、なんて一瞬だけ思ったりして。 だが、やって来た2人のその様子を見たとき、僕にはそんな2人に話しかけることなど、とても出来なかった。 だって、舞ちゃんはそれは本当に楽しそうに一生懸命にお嬢様に話しかけているんだ。 お嬢様もそんな舞ちゃんの話すことを天使のように柔らかい笑顔を浮かべて丁寧に聞いていらっしゃる。 それは僕ごときが割り込んで話しかけることができるような雰囲気ではなかった。 むしろ僕がここにいることなんかお2人に気づいて欲しくないとまで思う。 うん、楽しそうに話す2人のその空気を壊したりなんかしては絶対にダメだ。 思わず、バス待ちの人の後ろにさりげなく身を隠すようにする。 お嬢様を独占しようとするようなその舞ちゃんの熱心な話しかけっぷり。完全に2人の世界に入り込んでいる。 お嬢様も舞ちゃんも僕がここにいることには全く気づいていない様子。 良かった。舞ちゃんの笑顔を壊すことはしたくないから。 いま僕の目に入ってきた舞ちゃんのその笑顔。 心の内の喜びをストレートに表しているだろうな。それは無防備なほどに。あの舞ちゃんが。 それを見ることができること、僕にとってそれは幸せを感じる。 舞ちゃんは嬉しくて仕方がないんだろう。 だって、この春なかさきちゃんと栞菜ちゃんも卒業してしまったんだ。 ほとんどの寮生が卒業した今、残る愛理ちゃんはあの通り慎み深い方だし、学園への通学は舞ちゃんがほとんどお嬢様を独占できるようになったのだろうから。 657 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2013/08/25(日) 22 40 42 656 舞ちゃんが千聖お嬢様に向けている気持ち。 歳を重ねるにつれて学年も上になっていけばそれも薄まっていくだろう、と思ったりもしていたけれど、全くその気配は見えてこない。 むしろ、舞ちゃんのその気持ちは年々高まっているように僕には見えるんだ。いや、それは間違いなくそうなのかもしれい。 今も正にその光景を目の当たりにして。 新しい学年になって初めて舞ちゃんの姿を見れたことがとても嬉しいのに、僕は心のどこかで何か吹っ切れないものを感じている。 僕はいつか舞ちゃんの気持ちが僕に向いてくれる日が来るのをひたすら待っているんだ。 願いつづければそれはきっと叶うと信じて。 でも、それっていつまで待っていても永遠にやって来ないんじゃ・・・ 舞ちゃん・・・・ 突きつけられた残酷なまでの現実。 どうすればいいのか僕にはわからない。 頭が真っ白になってしまった僕は、上の空で乗り継いで、気付けば大学に着いていた。 教室へと向かうと、熊井ちゃんはまだ来ていないみたいだ。そして授業が始まっても彼女の姿は現れなかった。 気まぐれな彼女のことだ。僕はそのことを特に気に留めることもなかった。(それよりも今は・・・舞ちゃん・・・) 授業を受けても、全く頭に入ってこない。(それでも、、それでも僕は舞ちゃんのことが・・・) 「元気ないな。どうした?」 クラスメートが聞いてくるが、僕はそれに返事をすることも出来ない。(・・・こんなに苦しいのが初恋ですか?) そんなとき、熊井ちゃんがやってきた。 現れた彼女に席を譲るクラスメート。何故か僕の後ろの席が彼女の指定席となっているらしい。 重い気分でいる僕だったが、やって来た熊井ちゃんの姿を見て声をかける。 「熊井ちゃん、どこ行ってたの?」 僕の発した声は、やはりひたすら低い声になってしまった。我ながら暗い。暗すぎる。 そんな僕の様子には全くお構いなし。いつものように朗らかな大きな熊さんが見事なまでに対照的な明るい声で答えた。 「部室を見てきたんだよ。なかなかいい感じじゃない」 なるほど、部室の視察に行って、そのまま居眠りでもしてきたんだろう。予想通り彼女の昼寝部屋と化したか。 居眠りしたいのはこっちだよ。さっきまで徹夜で作業してたんだから。 そんなことを思ったら急激に眠気が襲ってきた。昼休みからは僕も部室に行ってちょっと寝てこようかな。 なんて思った僕だったが、そんなこと僕には許されないことなのだとすぐに思い知らされる。 「そろそろ行った方がいいんじゃない?」 熊井ちゃんに促されて時計を見た。 もうそんな時間か。 そう、学食の席取りに行く時間なのだ。 次へ TOP